白い服のピエロが、ほぼ正面を向いて立っている。大きな動きも笑顔もなく、その表情は簡単には読めない。かつて《ジル》と呼ばれた作品で、誰をモデルに、何のために描いたのかは今もはっきりしない。
何が描かれているか
白いゆったりした衣装に丸い帽子を着けた人物が、両腕を下ろしてこちらを向く。後ろには別の衣装を着た人々とロバが見えるが、身体の下半分が手前の土手に隠れるように配置されている。
ピエロはイタリア喜劇に登場する役柄。ここでは舞台の笑いを担う人物が、ひとり静止した大きな姿で示される。画家自身の肖像、あるいは特定の俳優の肖像だと断定する根拠はない。
作品の見どころ
まず白い衣装の明暗に注目してみよう。同じ白でも、肩、腹、膝で灰色や青みの差があり、ゆるい布の厚みが伝わる。衣装の大きさに対して手や足が小さく見えることも、独特の立ち姿を生んでいる。
中心人物はまっすぐ立つ一方、後ろの人物は横を向いたり身を傾けたりしている。その差が、ピエロだけを周囲から切り離して見せる。悲しい人だと決めず、自分にはどのような表情に見えるか考えてみたい。
制作背景
ルーヴル美術館は1718〜1719年頃の制作とする。18世紀の確実な来歴資料がなく、制作の事情には不明な点が多い。店や見世物の看板だったという考えもあるが、確認された事実とは区別が必要だ。
作品は2023〜2024年に修復を受け、改めて研究と展示が行われた。掲載画像も修復後のもの。古い通称の《ジル》だけで探すと別の説明に出会うことがあるため、現在の題名《ピエロ》も覚えておくとよい。