1660–1661年頃
27〜29歳
運河の向こうにデルフトの街並み。手前の岸に人影、空の半分を雲が覆う。
デルフト眺望
Gezicht op Delft / マウリッツハイス
奥に、日を浴びた尖塔せんとうが立っている。デルフトの新教会である。よく見ると、鐘の間の窓から空が透けている。塔に鐘が入っていないのだ。ここに鐘が吊るされたのは、1660年5月から翌年の秋にかけてだった。館によれば、それはフェルメールがこの絵を描いていた、まさにその時期にあたる。つまりこの塔は、絵の描かれた時期そのものを指している。
何が描かれているか
デルフトを南から見ている。手前は砂地の岸で、白い頭巾の女が二人、こちらを向いて立つ。左手には黒っぽい服の一団と、舫われた小舟がある。
水をはさんで向こうが街である。左に赤い屋根の家並み、中央に青と金の文字盤を掲げた門、その右に橋、さらに右へ、尖った屋根の塔を二本もつ門が続く。岸には帆をたたんだ舟が並んでいる。
空が画面の上半分を占める。上に重い灰色の雲、その下に白く明るい雲。街も水もほとんど日陰にあって、光が当たっているのは奥の塔と、右寄りの建物の一部だけである。
なぜ重要か
17世紀オランダの都市景観の中で、いちばん知られている一枚である。館は、光と影のやりとり、雲の空、水面の細やかな映りこみを挙げて、まぎれもない傑作だと書いている。
ただしこの静けさは、作られたものでもある。館によれば、フェルメールは画面を水・街・空の三本の横帯に分け、建物を実際より少し整えて描いた。新教会の塔も、本当はもう少し右にあったのを、中央へ寄せている。
制作背景
署名は左下、舟の上にある。最初の持ち主は、おそらくデルフトのピーテル・クラースゾーン・ファン・ライフェンで、その後はヤコブ・ディシウスの手に渡った。1696年5月16日の競売にも出ている。
19世紀に入るとハールレムのコプス家が持ち、1822年5月22日、アムステルダムの競売にかけられた。館のために競り落としたのはデ・フリースで、購入は同じ年である。
館は、フランスの作家マルセル・プルーストがこの絵を世界でいちばん美しい絵と呼んだ、と紹介している。この一枚だけを部屋に置き、来た人がひとりきりで向き合えるようにした催しも開かれた。
寸法
96.5 × 115.7 cm
材質・技法
カンヴァスに油彩ゆさい
所蔵
マウリッツハイス(デン・ハーグ)
目録
92
出典:マウリッツハイス 作品ページ2026-08-29 確認)