何が描かれているか
裸のヴィーナスが白と灰色の布の上に背を向けて横たわる。本人の右手で頭を支え、画面左のクピドが桃色のリボンのついた鏡を掲げる。鏡にはヴィーナスの顔がぼんやり映る。
頭を画面右、足先を左へ向けて身体が長く伸び、濃い灰色と白の布が輪郭に沿う。画面左には赤いカーテンと黒い枠の鏡があり、鑑賞者の視線を背中から顔の像へ戻す。
作品の見どころ
鏡の顔は身体に比べて小さく、細部もはっきりしない。鑑賞者は裸身をよく見られるのに、本人が何を見ているかは確かめにくい。鏡は姿を説明する道具ではなく、見ることを不安定にする。
クピドの手に絡む桃色のリボンは、鏡を支える帯のようにも、愛の結びつきを示す物のようにも見える。意味を一つに固定せず、身体、鏡、鑑賞者の視線がどうつながるかを見る。
制作背景
1647年から1651年頃の作品で、ロンドンのナショナル・ギャラリーがNG2057として所蔵する。ベラスケス作として現存する唯一の女性裸体画とされる。
正確な制作年と、スペインかイタリアのどちらで描かれたかは確定していない。第2回イタリア旅行と近い時期に置かれるが、ローマで描いたと断定せず、所蔵館が示す年代幅を保つ。