何が描かれているか
祭壇画を開くと、中央下部で祭壇上の子羊を人々と天使が囲み、上段には玉座の人物、聖母、洗礼者ヨハネ、音楽を奏でる天使、アダムとエヴァが並ぶ。
閉じた状態では受胎告知、寄進者夫妻、聖人像などが見える。礼拝の時期や場面に応じて、外側から内側へ違う世界が現れる。中央を軸に左右へ広がる人物と風景の対応を追うと、複雑な全体像をつかみやすい。
作品の見どころ
草花、宝石、衣、建築、遠景を一つずつ見分けられるほど細かく描く。多数のパネルでも、光の向きや色の反復が全体を結ぶ。
多翼祭壇画は、扉を開閉して見せ方が変わる宗教画である。美術館の一枚絵ではなく、教会の儀礼と時間の中で見る装置だった。まず遠目で上下のまとまりを捉え、次に近づいて草花や反射を探すと、二段階で楽しめる。
制作背景
1432年5月までにヘントの聖ヨハネ聖堂、現在の聖バーフ大聖堂へ設置された。寄進者はヨドクス・フェイトと妻エリザベート・ボルルートである。
銘文は兄フーベルトが制作を始め、ヤンが完成したと伝える。ただし二人の具体的な分担は決着しておらず、修復と技術調査が続く。兄弟の分担を決めつけず、銘文が伝える共同制作と、画面に残る違いを分けて考えたい。