何が描かれているか
毛皮の縁取りがある黒い衣の男性と、長い緑の衣の女性が室内に立ち、手を取り合う。足元には小型犬、奥の壁には丸い鏡がある。
窓から入る光が、寝台、果物、木靴、シャンデリアを照らす。鏡には二人の背中と、戸口に立つ別の人物まで小さく映る。人物の間に空いた細い隙間の奥へ鏡が置かれ、部屋の前後を一本の視線で結んでいる。
作品の見どころ
凸面鏡を使うと、正面の絵だけでは見えない部屋の反対側まで画面に入る。鏡の周囲にはキリスト受難の小場面が並ぶ。
緑の衣の膨らみは当時の布の持ち方でも生じるため、妊娠の証拠にはならない。細部をすべて一つの暗号に決めつけず、確かな物と解釈を分けて見る。犬、履物、果物を先に数えるより、窓から鏡へ移る光を追うと、室内の奥行きが捉えやすい。
制作背景
1434年の署名があり、ナショナル・ギャラリーがNG186として所蔵する。
人物をジョヴァンニ・ディ・ニコラオ・アルノルフィーニ夫妻とする従来説には再検討がある。結婚、婚約、追悼など場面の意味にも複数の説が残る。題名は広く定着している一方、人物と場面の確定名ではないことを覚えておくと、複数の解釈を比べやすい。