何が描かれているか
荒れた海で乗客を乗せた小舟が大きく傾き、漁師たちが魚を扱っている。
遠くにはカレーの桟橋と帆船が見え、暗い雲の切れ間から光が差す。中央左の白い帆を掲げた連絡船には乗客が密集し、手前の漁船は桟橋から離れようとする。桟橋上の人々まで見ると、海上と岸の両方で混乱が起きていることが分かる。
作品の見どころ
斜めに傾く舟、波、雲が同じ方向へ押し寄せ、見る側の足元まで揺れるように感じさせる。
手前の人物を小さく細かく描く一方、海と空は大きな色の動きで表し、人より自然の力が強い画面にする。波頭の白には厚い絵具が残り、滑らかな海面ではなく物質感のある荒波になっている。暗い雲を裂く光が白い帆へ集まり、複数の船の中で連絡船の位置を示す。
制作背景
1803年作。ターナー自身が1802年に初めて大陸へ渡った際、カレーへの上陸で荒天を経験したことと結びつけられている。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーは、事故の多い海峡横断と漁の仕事を一つにした複雑な海景として紹介している。1802年の荒天経験に基づくが、画面のすべてを旅の正確な再現とは考えない。翌年の展覧会では評価が分かれたことも含め、初期から大胆な筆触で海を組み立てた作品として見る。