何が描かれているか
ヴィーナスが胸を押さえ、腰を赤い布と毛皮で覆う。右では一人のクピドが鏡を掲げ、もう一人が冠を差し出す。鏡にはヴィーナスの顔が小さく映る。
ヴィーナスは鏡そのものではなく、その向こうの誰かを見るようにも見える。見る人、見られる女神、鏡像の三つの視線が一つの小さな面に集まる。
作品の見どころ
肌、真珠、金属、毛皮、赤いビロードを近くに置き、目で触れた感覚を想像させる。色だけでなく、絵具の塗り分けによって硬さと柔らかさを変えている。
調査では、下に別の二人の人物像が描かれていたカンヴァスを回転して再利用したことが分かっている。完成画だけでなく、描き直しの跡にも画家の判断が残る。
制作背景
ワシントンの所蔵版は1555年頃とされる。所蔵館は、ティツィアーノと工房が作った少なくとも30の異版の中で、特に質の高い本人作と位置づける。
画家が死ぬまで手元に置いていたが、その理由は確定していない。工房の見本だった可能性はあるものの、事実として断定しない。