何が描かれているか
復活したキリストが庭に立ち、ひざまずくマグダラのマリアへ顔を向けている。彼女はようやくキリストだと気づき、右手を伸ばす。キリストは身体を後ろへ引き、鍬のような道具を持つため、彼女が最初に庭師と見間違えた物語も画面に残る。
二人の間には触れそうで触れない空間がある。キリストの腕、マリアの腕、斜めに伸びる木の幹が、その小さな距離へ目を集める。
作品の見どころ
物語の中心は大きな奇跡の光ではなく、手と視線のやり取りである。マリアの赤い衣は手前で強く見え、キリストの白い布は朝の光に溶ける。色の違いが、近づこうとする人と離れようとする人を分ける。
風景は背景の飾りではない。丘の斜線、木の傾き、遠くの建物が二人の身体の動きに応える。ヴェネツィア派とは、ヴェネツィアを中心に色や光、油絵具の重なりを生かした画家たちの呼び名で、この初期作にもその特徴が見える。
制作背景
題名の「ノリ・メ・タンゲレ」はラテン語で「私に触れるな」を意味し、『ヨハネによる福音書』の場面を指す。所蔵館は1514年頃の初期作とし、誰のために描かれたかは分からないとしている。
高い明度の色と自然の中に人物を置く方法には、ティツィアーノと近い時期に働いたジョルジョーネとの関係が見える。ただし、似ていることを一方的な模倣とせず、若い画家たちが共有した新しい表現として見る。