1670–1672年頃
37〜40歳
鍵盤楽器の前に立ち、こちらを振り返る女。壁にキューピッドの絵が掛かる。
ヴァージナルの前に立つ女
A Young Woman standing at a Virginal / ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
女はこちらを見ている。館は、二つの読み方を並べている。演奏の途中に、こちらが入ってきてしまったのかもしれない。あるいは、こちらが座るのを待っていて、それから弾き始めるのかもしれない。ただし手前には、空いた椅子がひとつある。待たれているのは、こちらではない誰かなのかもしれない。どれとも決まらないまま、視線だけが残る。
何が描かれているか
若い女が鍵盤楽器の前に立ち、顔だけをこちらへ向けている。青い上着に白いそで、白っぽい繻子の裳。首に真珠、髪に飾りがある。
背後の壁には、裸のクピドを描いた大きな絵が掛かる。その左には、金の縁の小さな風景画。楽器の上にも、もう一枚の風景画が立てかけてある。
左には鉛の桟の窓があり、光が入っている。床は白と黒の市松で、壁の下には青い絵の入ったタイルが並ぶ。手前には、青い座布の椅子が背を向けて置かれている。
なぜ重要か
17世紀のオランダでは、音楽の場面がよく描かれた。館によれば、それは男女の出会いと結びつけられることが多く、あからさまに下卑たものもあれば、無邪気に見えるものもあった。
この絵の手がかりは、壁のクピドである。館は、その絵の様式が、変わらぬ愛を主題にした本の絵から来ていると書く。つまりこの部屋で待たれているのは、真面目な相手だということになる。空いた椅子は、まだ誰も座っていない。
制作背景
同じ館には、フェルメールが描いたもう一枚のヴァージナルの絵がある。座っている女の絵で、館は、二枚が対として作られたのではないかという推測が長く語られてきたと書いている。
似ているところは多い。ただし、はっきりした対比もある。館の言い方では、一方は変わらぬ愛を、もう一方は金で買われる愛を表しているのかもしれない。
どちらが正しいかを館は決めていない。二枚が並べて掛けられていたという記録も残っていない。
館は、この絵の構図こうずを、光の入る窓と楽器のあいだに人を立たせた形だと見ている。壁の三枚の絵は、どれも女の背より上にある。見る側の目は、まず顔へ行き、それから上の絵へ移ることになる。
寸法
51.7 × 45.2 cm
材質・技法
カンヴァスに油彩ゆさい
所蔵
ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
目録
NG1383
出典:ナショナル・ギャラリー(ロンドン)作品ページ2026-08-29 確認)