何が描かれているか
赤みのある髪のヴァリー・ノイツィルが、頬に手を添えてこちらを見る。青い目、白い襟、黒い衣、縞模様の布が、明るい背景の前で簡潔に分かれる。
人物は胸より上だけが描かれ、部屋や身分を示す道具はない。顔のわずかな傾きと手の位置が近い距離を作り、装飾よりも視線の持続が印象に残る。
作品の見どころ
青い目と赤い髪の対比が最初に目へ入り、そこから頬を支える手、衣の縞へ視線が下がる。線は硬く角張るが、顔の色は薄く重ねられ、強さと傷つきやすさが同居する。
《ホオズキの実のある自画像》と向かい合わせると、二人の顔が互いの方向へ傾く。作品から恋愛関係のすべてを読み取ることはできないが、対として設計された親密な距離は確認できる。
制作背景
1912年制作。ヴァリーはシーレのモデルであり、数年間の伴侶でもあった。彼女の生涯の記録は限られているため、画家の作品だけから人物像を作りすぎない注意が必要である。
1915年にシーレがエディットとの結婚を選び、ヴァリーとの関係は終わった。後の《死と乙女》はこの別れと結びつけて解釈されるが、本作では未来の悲劇を先取りせず、1912年の肖像として見る。