何が描かれているか
白いドレスと紫の帯を身につけたレディ・アグニューが、花柄の絹布を背に椅子へ座る。
左手は椅子の腕に置かれ、体を少し斜めにしながらこちらをまっすぐ見る。身体は椅子の背へ預けられ、片腕は力を抜いたように肘掛けへ伸びる。正面から見返す顔と斜めに傾く胴体を組み合わせることで、公式肖像の格式と自然な姿勢が同居する。
作品の見どころ
正面を向く視線とくつろいだ姿勢が、儀礼的な肖像に親しさと自信を加える。
白いドレスには灰、青、桃色が素早い筆触で重ねられ、紫の帯が全身を斜めに結ぶ。背後の花柄は細部を均一に描かず、人物の周りで色のまとまりとして広がる。白い衣服、紫の帯、淡い青緑の布地を順に見ると、顔へ視線が戻る色の流れができている。
制作背景
1892年作。モデルは1889年にアンドルー・アグニューと結婚したガートルード・ヴァーノンである。
1893年にロイヤル・アカデミーで公開され好評を得て、サージェントがロンドンの肖像画家として評価を固める一作になった。1893年の公開が画家の英国での評判を高めたことは所蔵館が説明している。一方、依頼に至った正確な事情は不明なので、夫婦の意図やモデルの気持ちまでは断定しない。