何が描かれているか
医師サミュエル・ジャン・ポッツィが、深紅の室内着と刺繍のある履物を身につけて立つ。
背景のカーテン、床、衣服まで赤系の色で満たされ、襟と袖の白が顔と手を引き立てる。人物は細長い画面のほぼ全高を占め、頭上や足元の余白も少ない。画面下にのぞく片足まで見ると、赤い衣服が身体を包む長さと人物の大きさがよく分かる。
作品の見どころ
縦長の画面と衣服のまっすぐな線が、人物を実際以上に堂々と見せる。
片手は襟元、もう片方は腰のひもへ触れる。長い指と布の光沢を追うと、赤一色に見える画面の中の細かな変化が分かる。襟元から腰ひもへ下る両手は、顔に次ぐ明るい部分として配置されている。カーテン、室内着、床の赤を見比べると、素材ごとに光沢や暗さが描き分けられている。
制作背景
1881年作。ポッツィはパリの著名な婦人科医で美術収集家でもあり、サージェントの友人だった。
職業を示す道具を置かず、自宅の私的な装いで描いた点が、公式の職業肖像とは異なる。題名の「自宅」は、医師を診察室や器具とともに描いた作品ではないことを示す。職業より私的な装いと立ち姿を前面に出した肖像として見ると、画面の演出が読み取りやすい。