1499–1510年頃
サルヴァトール・ムンディ。正面を向いたイエスが右手を上げて祝福し、左手に透明な水晶の球を持つ。背景は暗く何も描かれていない。
サルヴァトール・ムンディ
Salvator Mundi / 個人蔵
⚠️ 誰が描いたか、決着していない
この絵をレオナルドが描いたのかどうか、専門家の意見は分かれている。ここでは、どちらが正しいかを決めない。分かっていることだけを書く。
何が描かれているか
イエスが右手を上げて祝福し、左手に透明な球を持っている。サルヴァトール・ムンディ——ラテン語で「世界の救い主」——と呼ばれる、決まった形の主題だ。同じ構図の絵は、昔から何枚も描かれてきた。
手に載せた球は、世界そのものを指す。世界を手中に収めている、という意味になる。ただしこの球は水晶で、中に小さな光の点がいくつも散っている。
顔は正面をまっすぐ向いていて、ほとんど動きがない。背景は暗く、何も描かれていない。イエスだけが闇から浮かび上がる。祝福する右手の柔らかな肉づきと、肩にかかる細かい巻き毛は、この絵を疑う人でも出来の良さを認める部分だ。
なぜ重要か
この絵が有名なのは、絵そのものよりも、決着していないことによる。ふつう、名画は「誰が描いたか」が分かったうえで評価される。この絵は逆で、値段だけが先に決まった。
2017年11月15日、ニューヨークの競売で4億5030万ドルで落札された。美術品として、いまも史上最高額である。ところが、それを描いたのが誰なのか、専門家の意見は一致していない。レオナルド本人の手によるとする人もいれば、工房の弟子が描いたのではないかとする人もいる。史上最も高く売れた絵が、誰の絵か分かっていない。
制作背景
2005年、アメリカのニューオーリンズで開かれた小さな競売に出ていた。買ったのは2人の画商で、その時はレオナルドの絵だとは思っていない。板は虫に食われ、後の時代に何度も上から塗り重ねられていて、元の絵はほとんど見えなかった。
板の修復を任されたのが、ニューヨークの修復家ダイアン・モデスティーニだった。彼女は割れた板を組み直し、後から塗られた絵の具を剥がし、欠けた部分を埋めていった。その作業の途中で、修復した本人と持ち主たちは「これはレオナルドだ」と確信するようになる。
疑う側が指す弱点も、そこにある。あれだけ大がかりに修復したせいで、元の絵がどれほどの出来だったのか判断できなくなった、という言い分だ。来歴にも空白がある。1763年から1900年まで、この絵の記録がどこにも見つかっていない。ロンドンの国立美術館は2011年、レオナルドの展覧会にこの絵を並べた。落札の後、絵は個人の手に渡り、いまどこにあるかは公表されていない。
寸法
65.6 × 45.4 cm
材質・技法
クルミ板に油彩ゆさい
所蔵
個人蔵。現在の所在は公表されていない
売買
2017年11月15日/4億5030万ドル=美術品として史上最高額
出典:Encyclopaedia Britannica / ロンドン・ナショナル・ギャラリー 2011年の展覧会2026-08-29 確認)
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