大きな帽子の下から、若い女性がこちらを見る。通称は《麦わら帽子》だが、帽子はフェルト製。女性はシュザンヌ・ルンデンと考えられているものの、確定していない。顔に落ちる柔らかな影と、胸元の明るさを見比べると面白い。
何が描かれているか
女性は暗い帽子をかぶり、赤い袖の衣を着て、両手を身体の前で重ねる。背後には青みを帯びた空が広がる。帽子に添えられた羽根が、輪郭を大きく横へ伸ばしている。
帽子のつばは額や目のまわりへ影を落とすが、表情は隠れてしまわない。胸元や首の明るさが顔へ目を導き、黒い衣の中でも肌の柔らかさが感じられる。
作品の見どころ
肖像画を見るときは、顔だけでなく手にも注目したい。重ねた手の落ち着いた形に対し、帽子や袖には広がりがある。この大小の差で、人物は静かでも画面は単調にならない。
屋外の空と装いの色が組み合わされ、暗い帽子も重苦しいだけには見えない。帽子の影の内側にも明るさが残るところを、拡大して確かめてみよう。
制作背景
おそらく1622〜1625年の制作。モデルをシュザンヌ・ルンデンとする見方が有力だが、所蔵館の作品名にも疑問符が付いている。1622年の結婚に関係するという説明も、可能性として読む必要がある。
《麦わら帽子》という名は18世紀にさかのぼる呼び方で、描かれた素材を正確に言い表してはいない。作品名から思い浮かべた姿と、実際に見えるものが違う好例でもある。