何が描かれているか
立ち上がる馬や槍を構える人の間へ、ライオンが飛び込んでくる。地面にも人や動物の身体が重なる。どこか一方向へ進む狩りではなく、力が複数の向きにぶつかる場面だ。
主な色は褐色で、ところどころに明るい色が置かれている。輪郭をくっきり描き切らない部分もあるが、馬の首や人の腕がどちらへ向かうかは読み取れる。
作品の見どころ
まず細かな人物探しをせず、斜めに走る槍や馬の背中を追ってみよう。線の方向が次の身体へ視線を送り、混雑した場面の中に大きなまとまりを作っているように見える。
完成作の滑らかな表面とは違い、ここでは絵の具の動きが残る。下描きだから価値が低いということではなく、配置や勢いを決める仕事そのものを見る手がかりになる。
制作背景
1614〜1615年頃の油彩スケッチ。ルーベンスは大きな制作に取り組む際、素描だけでなく、油彩で色や明暗を試す方法も用いた。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーが所蔵する一点で、同じ画家によるほかの狩猟画とは区別している。ここでは、細部の完成度よりも人と動物の動きをどう結び付けたかに注目したい。