武装した男が進み、そのまわりで人々が引かれ、倒れ、手を伸ばす。特定の戦場を記録するのではなく、戦争が暮らしや文化を壊すことを表した絵だ。ルーベンス自身が1638年の手紙で、その意味を説明している。
何が描かれているか
画面には、前へ進もうとする人物と、それを引き止めるような人物が重なる。足元にも人や物が押し込まれ、ゆっくり立っていられる場所がないように見える。
暗い衣、明るい肌、赤い布が絡み合い、あちこちへ視線が引かれる。人物の名前をすべて知らなくても、集団の動きが誰かを押し流してしまう感覚を受け取れる。
作品の見どころ
「寓意」とは、抽象的な考えを人物や物に置き換えて表す方法。この作品では、戦争の被害を一人のけがや一つの建物だけに限らず、芸術や文化まで含む問題として見せている。
同じ画家の《平和と戦争》と比べると違いが分かりやすい。あちらでは豊かさを守ろうとする配置が目に入るが、こちらでは人物の動きがぶつかり、落ち着いて眺められる中心を探しにくい。
制作背景
1637年、画家ユストゥス・スステルマンスからの注文で制作が始まり、1638年3月12日付の手紙にルーベンス自身の説明が残る。ここでは制作時期を1637〜1638年としている。
ヨーロッパで三十年戦争が続いていた時期の作品である。現在の所蔵先は、フィレンツェのピッティ宮殿にあるパラティーナ美術館。ウフィツィ美術館群の一部だが、ウフィツィ本館とは別の場所になる。