何が描かれているか
目を閉じた女性が手を開いて座り、赤い鳥が白い花をその手元へ運ぶ。
背景には日時計、橋、二人の人物、赤い夕日がぼんやりと見える。女性は両手を膝の上で開き、顔を上へ傾けて目を閉じる。赤い鳥は画面右から手元へ近づき、背景の橋と二人の人物は霧のような光の中に小さく残る。
作品の見どころ
輪郭のはっきりした肖像ではなく、閉じた目と柔らかな光で意識が別の世界へ移る瞬間を表す。
赤い鳥と白い花が小さいながら強い色の焦点となり、生と死の境目を示唆する。顔と手は淡い光に包まれ、髪と衣服の輪郭は背景へ柔らかく溶ける。赤い鳥、白い花、夕日の円を順に見ると、離れた三つの色が画面を結んでいる。
制作背景
1864〜1870年頃の作。ダンテ『新生』のベアトリーチェの死を主題に、1862年に亡くなった妻エリザベス・シダルの面影を重ねた。
シダルの死後に新たに写生した肖像ではなく、以前の素描や絵をもとに制作された。シダルの面影とベアトリーチェの物語は重ねられているが、死の瞬間を現実どおりに再現した肖像ではない。過去の素描を用い、文学と記憶を一つの象徴的な場面へ組み直した。