何が描かれているか
緑の衣を着た女性が正面に立ち、長い黒髪を広げる。左右には松明を持つ人物がいる。
頭上には月と星が浮かび、中央人物の両手は腹の前で組まれている。中央人物は画面のほぼ全高を占め、広げた髪が肩から左右へ流れる。背後の二人は影の中で松明を掲げ、頭上の月と星が三人を縦にまとめている。
作品の見どころ
左右対称に近い配置と正面性が、人物を肖像ではなく礼拝される女神の像のように見せる。
濃い緑、赤い唇、金色の光を絞って使い、暗い画面に重い高級感を作る。正面を向く顔、胸元、組んだ手が中央の軸に並び、左右の人物はほぼ鏡のように対応する。緑の衣の襞と髪の曲線が、動かない立ち姿にゆるやかな広がりを与える。
制作背景
1877年作。古代西アジアの愛と豊穣の女神アスタルテを題名に用い、モデルにはジェーン・モリスを起用した。
ロセッティ自身の詩が額に記され、絵画と文学を一体として見せる晩年の代表例である。古代の女神名を用いているが、特定の祭祀場面を考古学的に復元した絵ではない。モデル、詩、左右対称の構成を組み合わせ、ロセッティ独自の女神像を作った作品として見る。