音楽家の肖像
Ritratto di Musico / アンブロジアーナ絵画館
何が描かれているか
楽譜を手にした若い男の胸像。顔だけが仕上がっていて、体と衣は途中で止まっている。背景は暗く、何も描かれていない。
アンブロジアーナ絵画館は、研究者が強い明暗法と、顔立ちの彫刻のような硬さを指摘していると書く。楽譜を持つ手の描き込みの細かさも、特に目を引く部分として挙げられている。
美術館はもうひとつ、奇妙な観察を書き添えている。左右の瞳孔の大きさが違う。左目の方がわずかに小さい。美術館は、光が弱まるにつれて瞳孔が広がっていく、その途中の瞬間が捉えられているのだと読む。ただしこれは美術館の解釈で、確かめられた事実ではない。
なぜ重要か
ミラノに残ったレオナルドの板絵は、これ1点だけである(美術館の記述による)。長いあいだ、この絵はミラノ公ルドヴィーコ・イル・モーロの肖像だと考えられていた。
それが変わったのは1905年である。修復で後世の加筆が取り除かれ、画面の下の方から楽譜を持つ手が現れた。描かれているのが誰なのかは、いまも分かっていない。それでも、支配者ではなく音楽家だということだけは、絵の中から出てきた。
制作背景
制作年について、美術館の作品ページは何も書いていない。他の作品では必ず載っている項目が、この絵にはない。
美術館に入った経緯は、1637年のガレアッツォ・アルコナーティ伯の寄贈と見られている。「おそらく」と書かれていて、断定はされていない。この時、名高いアトランティコ手稿も一緒に贈られた。レオナルドの手稿の最大のまとまりと、板絵1枚が、同じ日にこの図書館へ入ったことになる。
細かい話がひとつある。この美術館の作品ページは、イタリア語版と英語版で中身が違う。明暗法や瞳孔の観察が載っているのは英語版だけで、イタリア語版は3文で終わる。同じ館の、同じ絵の説明である。
出典:アンブロジアーナ絵画館 作品ページ(2026-08-29 確認)