赤い髪の人物が、うつむく人物を抱き寄せる。もとの題名《愛と痛み》を知ると、吸血の場面と断定せず、慰めと苦しさが重なる抱擁として見直せる。
何が描かれているか
赤い髪の人物が、黒い服でうつむく人物の首元へ顔を寄せ、両腕で抱く。
二人の周囲は暗く、赤い髪だけが肩と背中を囲むように広がる。
作品の見どころ
長い髪は抱擁する腕にも、相手を包む流れにも見える。
慰め、愛、支配、痛みのどれか一つに場面を固定しない曖昧さが、見る人の感情を揺らす。最初に赤い髪の大きな弧を見て、そこから黒い服の人物の頭部、抱える腕へ視線を移す。顔の表情が詳しく描かれないため、髪と腕の形が二人の関係を強く示す。赤、黒、淡い肌色の境目を近くで見て、少し離れて二人が一つの塊に見えるか確かめたい。《吸血鬼》という後の題名だけに従わず、抱擁の曖昧さを残して見る。二人の輪郭が背景へ溶ける部分にも注目すると、抱擁の境界が不確かなまま残ることが分かる。
制作背景
ムンクは当初この主題を《愛と痛み》と呼んだ。現在の《吸血鬼》という題名は、ベルリンで交流した作家スタニスワフ・プシビシェフスキが付けた可能性が高い。
題名が後から見方を変えた例でもある。
もとの題名は《愛と痛み》でした
『吸血鬼』という名は友人が付けた可能性が高く、画面を吸血の場面とだけ決めつけることはできません。
出典・画像について
画像はWikimedia CommonsのPD-Art複製です。忠実複製の扱いには法域差があります。
画像:Edvard Munch《吸血鬼》/Edvard Munch, Vampire, MUNCH, via Wikimedia Commons.
忠実な美術作品複製の法的扱いには法域差があります。
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