何が描かれているか
農夫が斜面を大股で進み、右手で種をまく。背後には牛を使って畑をならす人が小さく見える。
人物の顔は帽子と逆光で暗く、個人の肖像より動作が中心になる。腰の袋から取り出した種が、振り出す右手の先へ細かな点となって散る。左脚は斜面を踏み、右脚は大きく後ろへ伸びるため、人物がこちらへ近づく一瞬として見える。
作品の見どころ
伸ばした脚、振る腕、斜めの地面が同じ方向へ進み、一歩の勢いを強める。
夕暮れの空と土を近い色でまとめ、種をまく手だけを明るく浮かせる。身体は画面の縦幅いっぱいに近く、遠景の牛と働く人との差が大きい。帽子に隠れた顔より、三角形に広がる脚と腕の輪郭が先に目へ入り、農作業の反復を力強い身振りへ変える。
制作背景
1850年作。同年のサロンで公開され、ミレーの農民画を広く知らしめた。
現在はボストン美術館所蔵。聖書の種まきの比喩も連想できるが、画面は同時代の農作業として描かれる。聖書の『種まく人』を思わせるという解釈はあるが、光輪や宗教的な場面は描かれていない。象徴だけへ急がず、斜面を歩きながら種を均等にまく同時代の仕事としても確かめたい。