牛乳を注ぐ女
Het melkmeisje / アムステルダム国立美術館
フェルメールが残した絵は多くない。マウリッツハイスによれば、1点にとても長い時間をかけたので、多くを仕上げなかった。知られているのは36点だけである。その少ない仕事の中に、女中が牛乳を注ぐという、ごく当たり前の家事を描いた絵がある。台所に差す光と、注がれる白い筋。それだけで、これほどの絵になっている。
何が描かれているか
台所で、女中が壺から鉢へ牛乳を注いでいる。仕事に完全に没入している。アムステルダム国立美術館の説明はこうだ。注がれている牛乳の筋のほかは、すべてが静止している。
机の上にはパンの入った籠と土器の水差し。左には窓があり、その脇に籐の籠と真鍮の鍋が掛かる。右手の壁の下にはタイルが一列並び、足元に足温器が置かれている。
館は光の扱いについても書いている。何百という色の点が、ものの表面の上で光を踊らせている。明るい部屋の中で、女はまるで彫像のように立っている。
なぜ重要か
主題はごく当たり前の家事である。牛乳を注ぐ、それだけだ。フェルメールはその日常の一場面を、堂々とした絵の主題に変えた。館はそこを、この絵の要として挙げている。
17世紀のオランダでは、女中を描いた絵は珍しくなかった。ただし多くは滑稽な話や色恋の含みを持たせるためのものだった。この絵にはそれが無い。あるのは、注ぐという一つの動作と、そこに落ちる光だけである。
制作背景
最初の持ち主は、同じデルフトに住んでいたピーテル・クラースゾーン・ファン・ライフェンとみられる。フェルメールの絵をまとめて持っていた人である。
絵は娘のマグダレーナへ、さらにその夫ヤコブ・ディシウスへと渡り、1696年5月16日、アムステルダムの競売にかかった。175ギルダーで落ちている。1719年の競売では126ギルダーまで下がった。
値が上がり始めるのは18世紀の終わりからで、1798年に1550ギルダー、1813年に2125ギルダー。1908年、アムステルダム国立美術館がシックス家の相続人から、ほかの38点とまとめて55万ギルダーで買い取った。レンブラント協会の援助を受けての購入である。
出典:アムステルダム国立美術館 作品ページ / マウリッツハイス フェルメール紹介(2026-08-29 確認)