1494年頃
18〜19歳
マンチェスターの聖母。聖母マリアの膝もとに幼いキリストと洗礼者ヨハネがいて、左右に天使たちが立つ。左側などに下描きや下塗りが残る未完成の板絵。
マンチェスターの聖母
The Virgin and Child with Saint John and Angels ('The Manchester Madonna') / ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
青くなるはずの衣が、黒いまま残っている。マリアの衣に見える黒は、仕上げの青を重ねる前の下地だ。左側の天使にも、肌の色の下に隠れるはずだった緑がかった層が見える。未完成だからこそ、色を重ねて人の姿を作っていく手順をたどれる。描かれた人物を見るだけでなく、その人物が絵になる途中を見る作品である。暗い色や線の残り方に注目したい。
何が描かれているか
岩に腰かけるマリアを中心に、幼いキリストと洗礼者せんれいしゃヨハネ、左右の天使が集まっている。マリアと幼いキリストを組み合わせた絵を、聖母子せいぼしという。キリストが手を伸ばす先には、マリアの持つ本がある。まずは母と子の手の位置を追うと、人物同士の関係がつかみやすい。
左側の天使は、右側ほど描き込まれていない。衣の折り目を示す線が残り、肌になる部分には緑がかった下地が見える。これは緑色の肌をした天使ではなく、その上に肌色を重ねる途中の状態だ。マリアの黒い衣も、最後に青を重ねる前で止まっている。
なぜ重要か
未完成のおかげで、絵の具をどう重ねたかが見えてくる。この絵は、卵を使うテンペラという絵の具で板に描かれた。所蔵館の技法解説によると、乾くのが速いため、短い筆の線や点を重ねて色の移り変わりを作る。衣の暗い部分は、そうした筆の動きを探せる場所でもある。
もう一つの特徴は、人物が画面を大きく占めること。ナショナル・ギャラリーは、その配置を浮き彫りに似ていると説明する。浮き彫りとは、平らな面から人物などがり上がる彫刻のことだ。遠くの景色へ視線を誘う絵とは違い、身体の輪郭りんかくや重なりが目に入りやすい。
制作背景
制作は1494年頃とされる。ミケランジェロは画家ギルランダイオのもとで絵を学び、彫刻の訓練も受けていた。細かな筆の積み重ねと、立体を思わせる人物の配置。この絵には、絵画を学んだ経験と彫刻への関心を並べて見る手がかりがある。
題名のマンチェスターは、描かれた場所を指すのではない。1857年に同市の展覧会へ出品されたことから、この呼び名が付いた。未完成になった理由は、今も分かっていない。残された下地から描く手順は読み取れても、制作をやめた事情まで確定できるわけではない。
寸法
104.5 × 77 cm
材質・技法
板に卵テンペラ
所蔵
ナショナル・ギャラリー(ロンドン)51室
目録
NG809
ほか
未完成
出典:ナショナル・ギャラリー(ロンドン)作品ページ / ナショナル・ギャラリー(ロンドン)ミケランジェロ略歴2026-09-05 確認)
画像:ミケランジェロマンチェスターの聖母》/Michelangelo, The Manchester Madonna, National Gallery, London (NG809). Colour-adjusted reproduction via Wikimedia Commons. PD-Art / Public Domain Mark 1.0; jurisdiction note applies.
画像の出典 / Public Domain Mark 1.0(法域注意)(画像情報:2026-09-05 確認)
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