1536–1541年
61〜66歳
最後の審判の修復前全景。中央のキリストを大勢の人物が取り囲み、下部では死者が目覚め、左で天へ上がり、右で地獄へ落とされる。
最後の審判
Il Giudizio Universale / システィーナ礼拝堂(バチカン美術館)
いま見える布のすべてが、ミケランジェロの描いたものではない。裸体の一部を隠すため、別の画家たちが後から描き足した布もある。完成した絵がそのまま残っている、と考えると見落としてしまう変化だ。この作品には作者の仕事に加えて、後の時代の人々が、その身体の表現をどう受け止めたかも残っている。いまの姿には、作品が受け継がれた時間も含まれる。
何が描かれているか
礼拝堂の祭壇の後ろの壁に、審判を下すキリストを中心とした大きな場面が広がる。これはキリスト教の「最後の審判」という主題を描いたものだ。下部中央の天使たちは長いラッパを吹いて死者を目覚めさせ、向かって左では人々が天へ上り、右では地獄へ落とされる。
人物を見分ける目印もある。ペテロが持つのは二本の鍵だ。最初から画面の全員を覚えなくても、こうした持ち物を一つ見つけると、群衆の中の誰を見ているかが分かる。中央のキリスト、ラッパを吹く天使、鍵を持つペテロと、少しずつ目印を増やせる。
なぜ重要か
下の方には、舟を操るカロンや、蛇に巻かれたミノスも登場する。バチカン美術館は、この部分をダンテの『神曲』地獄篇との関わりで説明している。聖書の主題を扱う絵の中に、文学で語られた地獄の姿も取り込まれているのである。
いまの画面には、完成後の受け止められ方も残る。裸体の一部を隠す布は、ダニエーレ・ダ・ヴォルテッラらが後から描き加えたものだ。身体の表現が問題視された経緯けいいは、メトロポリタン美術館も説明している。作者の筆だけで現在の姿になった作品ではない。
制作背景
制作期間は1536–1541年。天井画の1508–1512年より後の仕事で、同じ礼拝堂にあっても制作時期は異なる。天井では建築のような枠に物語が区切られるのに対し、こちらではキリストを中心に人々が集まり、上下へ動く。二つを比べるなら、その配置の違いが手がかりになる。
後世の布を、すべて同じ時に加えられたものと考えるのも正確ではない。バチカン美術館によれば、ヴォルテッラの仕事の後も、別の時代に覆いが足された。一度完成した後にも、どんな姿で残すかが変わってきた。その時間まで含めて見る壁画である。
制作
1536–1541年
所在
システィーナ礼拝堂の祭壇壁(バチカン)
中心
審判を下すキリスト
画像
Yorck Projectによる修復前の全景複製ふくせい
出典:バチカン美術館 最後の審判 / メトロポリタン美術館 ミケランジェロ展2026-09-05 確認)
表示画像は修復前の古い全景複製です。1994年の修復完了後や現在の色調とは異なります。
画像:ミケランジェロ最後の審判》/Michelangelo, The Last Judgment (unrestored view). Reproduction: The Yorck Project (2002), via Wikimedia Commons. Public Domain.
画像の出典 / Public Domain Mark 1.0(画像情報:2026-09-05 確認)
Yorck Project由来の修復前全景です。1994年の修復完了後や現在の色調とは異なります。
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