何が描かれているか
聖母マリアが高い玉座に座り、幼子キリストへ葡萄を差し出す。幼子は実を口へ運び、足元では二人の小さな天使がリュートのような楽器を奏でる。
玉座の上端は画面から切れ、低い位置から見上げる角度で描かれる。これは元の祭壇で高い位置に置かれたことを意識した構成で、鑑賞者の視点と結びつく。
作品の見どころ
幼子の丸い身体と聖母の大きな膝に強い光が当たり、重量を感じさせる。葡萄は日常の食物であると同時に、キリストの血と将来の受難を連想させる。
足元の天使が持つ楽器の斜めの線は、一つの消失点へ向かうよう調整される。小さな細部にも遠近法を使い、画面全体の見上げる空間をそろえている。
制作背景
1426年、ピサのサンタ・マリア・デル・カルミネ聖堂の公証人ジュリアーノ・デッリ・スカルシが注文した多翼祭壇画の中央部分である。現在はロンドンのナショナル・ギャラリーが所蔵する。
祭壇画は18世紀までに解体され、各部分が散逸した。《磔刑》など現存断片と合わせることで、中央の聖母子が下段、磔刑が上部にあった元の上下関係を想像できる。