何が描かれているか
中央で徴税人がキリストと使徒へ税を求める。キリストは湖を指し、左奥ではペトロが魚の口から硬貨を取り、右ではその硬貨を徴税人へ渡す。
同じペトロが三度登場するが、建物、山、湖を共有する一つの風景に置かれる。中心の身振りから左、右へ視線を動かすと、命令、行動、結果の順に物語を読める。
作品の見どころ
人物の影と衣の明暗は同じ方向からの光に従い、礼拝堂の実際の窓から光が入るように見える。絵の中の光と建築の光を近づけ、人物を壁面の空間へ立たせる。
中央の使徒群は円をつくるが、顔と手の方向が物語を外へ広げる。遠近法だけでなく、身振り、光、背景の縮小を組み合わせて複数時点を迷わず読ませる点が見どころである。
制作背景
1424〜1427年頃、フィレンツェのブランカッチ礼拝堂に描かれた聖ペトロ伝の一場面である。マゾリーノとの共同事業だったが、本作はマザッチョの主要部分とされる。
礼拝堂の壁画は1427年頃に未完となり、後にフィリッピーノ・リッピが補った。現在見える連作には制作時期の異なる部分があり、本作も礼拝空間全体の中で位置を確認する必要がある。