何が描かれているか
奥行きのある礼拝堂の中に、父なる神が十字架上のキリストを支え、その間に聖霊を表す鳩が置かれる。手前には聖母マリア、聖ヨハネ、左右の寄進者が立つ。
下部には墓と骸骨が描かれ、「かつて私はあなたであり、やがてあなたは私になる」という死の警告を伝える。上の救済と下の死が縦方向に結ばれる。
作品の見どころ
円筒ヴォールトの格子と柱の線を延ばすと、鑑賞者の目の高さ付近に消失点が集まる。平らな壁が実際にくぼみ、人物が建築の中に立つような錯覚が生まれる。
寄進者も聖人より極端に小さくされず、同じ尺度で置かれる。一方、父なる神は奥にいながら大きく見える。遠近法の自然さと宗教的な階層が慎重に調整されている。
制作背景
フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂に1425〜1427年頃描かれた。建築家ブルネレスキが遠近法設計に関わったという説は有名だが、直接の記録がないため断定しない。
線遠近法は技巧を見せるだけでなく、現実の聖堂壁と描かれた礼拝堂を連続させる。見る人は死を示す墓の前に立ち、その上の祈る人物と三位一体を順に仰ぐことになる。