糸車の聖母(バクルー版)
Madonna of the Yarnwinder / スコットランド・ナショナル・ギャラリー
何が描かれているか
聖母の膝のそばで、幼子キリストが岩の露頭に腰かけている。手に持っているのは糸巻き。十字の形をしている。
子はそれをじっと見つめている。スコットランド・ナショナル・ギャラリーは、その様子を「自分の将来の磔刑をすでに知っているかのように」と書く。
母の表情はやさしく、仕草はためらいがちだ。美術館は、それがこの場面の痛切さを強めているとしている。なお美術館は、幼子の体が「異様に大きい」とも書き添えている。
なぜ重要か
糸を巻く道具が、十字架の形をしている。母は糸を紡ぎ、子はその道具の形に自分の最期を見ている。日常の道具ひとつで、運命の話になっている。
どこまでがレオナルドの手かは、研究者の間で割れている。美術館の見方はこうだ。全体の構想と、人物および前景の岩の実制作は、まるごと彼自身のものである可能性が高い。ただし背後の風景は、おそらく別の画家が後から加えたもので、彼が下描きしただけで仕上げなかった風景を覆っている。
制作背景
1501年の書簡に出てくる1点と、おそらく同じ絵である。フィレンツェにいた代理人が、マントヴァ侯妃イザベラ・デステに宛てて書いたものだ。
その書簡によれば、注文したのはフロリモン・ロベルテというフランスの重臣で、イタリアと深い縁を持つ外交官だった。ただし美術館は「レオナルドは作品を完成させないことで悪名高かった」と書き、この絵が実際にロベルテの手に渡った可能性は低いとしている。
2003年、この絵はバクルー公の邸宅ドラムランリグ城から盗まれた。戻ってきたのは4年後の2007年である。いまは美術館の所蔵品ではなく、貸与品として展示されている。スコットランドにあるレオナルドは、この1点だけだ。
所蔵
スコットランド・ナショナル・ギャラリー(貸与)
出典:スコットランド・ナショナル・ギャラリー 作品ページ(2026-08-29 確認)
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