ラブレター
De liefdesbrief / アムステルダム国立美術館
この絵は、暗い部屋の中から覗いている。手前には箒と、脱ぎ捨てられた上履きがある。その向こうの明るい部屋で、女が女中から手紙を受け取ったところである。館は、この見る位置の取り方を、フェルメールにしては変わっていると書く。見ている側は招かれていない。戸口の暗がりから、他人の家の中をそっと見ていることになる。
何が描かれているか
手前は暗い。左に戸が開き、右には模様の入った垂れ布が下がる。その隙間から、奥の明るい部屋が見えている。
奥では、黄色い繻子の裳に白い毛皮縁の上着を着た女が座り、膝に弦楽器を抱えている。片手に小さな紙を持っている。顔を上げて、後ろに立つ女中を見ている。女中は白い頭巾をかぶり、口もとをゆるめている。
壁には額が二つ。上は風景、下は帆船の浮かぶ海である。床は白と黒の市松で、手前に箒が立てかけてあり、上履きが二つ脱ぎ捨てられている。左には洗濯物の入った籠。署名は左の壁の上にある。
なぜ重要か
館は、壁の海の絵が手紙の中身を指しているのかもしれない、としている。17世紀には、海はしばしば恋にたとえられ、恋する相手は船にたとえられた。絵の中の絵が、言葉にされていないことを言っている。
手前の暗がりも、ただの飾りではない。箒と上履きと洗濯籠は、いま止まっている家事である。手紙が一通届いただけで、部屋の手前と奥で時間の流れ方が変わっている。
制作背景
1892年3月29日、アムステルダムの競売にこの絵が出た。落札額は4万1千ギルダー。競り落としたのはレンブラント協会のアンケルスミットで、館に入れるためだった。
翌1893年、協会はこの絵を1万5千ギルダーで館へ渡している。差額は協会がかぶったことになる。
それより前の持ち主はアムステルダムのファン・レネップ家で、娘、その相続人と伝わってから、この競売に出された。
1971年、この絵は盗み出されている。館が挙げている当時の報告は、盗まれ、傷つき、戻り、直された、という題で書かれた。同じ年の10月の新聞は、修復は奇跡か、と見出しを打っている。
出典:アムステルダム国立美術館 作品ページ(2026-08-29 確認)