ヴァージナルの前に座る若い女
Young Woman Seated at a Virginal / ライデン・コレクション
この絵がフェルメールの作かどうかは、20世紀のあいだ疑われ続けていた。決め手のひとつになったのは、布である。織り糸の数を数えた研究で、この絵の布が、ルーヴルにある《レースを編む女》と同じ反物から切り出されたものだと分かった。同じ一巻きの布を、同じ画家が切り分けて使っていたことになる。その布の年代は、1669年から71年頃とされている。
何が描かれているか
若い女が鍵盤楽器の前に腰かけ、肩ごしにこちらを見ている。両手は鍵盤の上に置かれ、いま音を出しているところである。
肩に黄色い肩掛けを羽織り、下は白い繻子の裳。髪は細かく巻いて結い上げ、赤いリボンと小さな玉の連なりを挿している。
楽器の上には譜面台が立ててある。右には青い背もたれの椅子。背後の壁には何も掛かっていない。画面は小さく、女の上半身がほとんどを占めている。
なぜ重要か
所蔵者の目録によれば、この絵が捉えているのは、音楽と噛み合っている時の静かな喜びである。女は椅子の上で少し前へ傾き、楽器の柔らかい音をこちらにも分けたいかのような顔でこちらを見ている。
髪の巻き方、赤いリボン、小さな玉の飾り。目録は、それらをきちんとした育ちと細やかな感じ方の印だと読む。そのうえで、この絵を近しいものにしているのは、そうした印ではなく顔そのものだ、としている。
制作背景
1935年、ロッテルダムの美術館で、フェルメールだけを集めた最初の展覧会が開かれた。大変な人気だったが、出品作の帰属を疑う研究者が現れる。その疑いは後の書き手にも引き継がれ、1958年の研究書は、この絵の帰属を確かでないと書いた。
1990年代に入って、材料と技法の調査が行われる。結果は2004年の競売目録にまとめられ、2006年に全文が公にされた。使われている材料も描き方も、フェルメールの後期の絵とよく合っていた。
2004年7月7日、この絵はロンドンの競売にかけられた。落札者の手を経て、2008年にいまの持ち主のもとへ入っている。画面が小さいことも、この絵の性格を決めている。目録は、好きな机の上に置いたり、人目につかない場所に掛けたりして眺める絵だったろう、と書いている。
所蔵
ライデン・コレクション(ニューヨーク・個人蔵)
出典:ライデン・コレクション 作品目録(2026-08-29 確認)