1665年頃
32〜33歳
黄色い上着の女が机で手紙を書きながら、顔を上げてこちらを見ている。背後の壁に楽器の静物画。
手紙を書く女
A Lady Writing / ナショナル・ギャラリー(ワシントン)
フェルメールの絵が何点残っているのか、館によって数が違う。この絵を持つワシントンの館は35点だと書く。デン・ハーグのマウリッツハイスは36点だと書く。帰属をめぐって意見の割れている作品があるからである。このサイトは、どちらが正しいとは決めない。数え方が定まっていないこと自体が、この画家の残り方をよく表している。
何が描かれているか
女が卓につき、右手に羽根ペンを持っている。紙の上に手を置いたまま、顔だけをこちらへ上げている。口もとがわずかにゆるんでいる。
上着はレモンのような黄色で、白い毛皮で縁どられている。髪には白い繻子のリボンが結ばれ、耳には真珠の飾りがある。
卓には青みがかった布が掛かり、真珠の首飾りと、開いた宝石箱、紙とインクつぼが置かれている。背後の壁には大きな暗い絵が掛かり、右には真鍮の鋲を打った椅子がある。
なぜ重要か
館は、フェルメールを何より光の画家だと書いている。この絵で光は、直に射すのではなく、回りこむようにして、卓の上と、女の顔と、黄色い上着を照らしている。
そのうえで館が挙げるのは、宝石箱を飾る真珠、耳の飾り、髪のリボンに置かれた光の点である。強い明暗ではなく、小さな輝きを散らすやり方で、画面が生きたものになっている。
この絵の女が誰なのかは分かっていない。手紙の宛先も、書いている中身も画面には無い。残っているのは、ペンを止めて顔を上げた、その一瞬だけである。
制作背景
フェルメールが画家の組合に親方として登録されたのは、1653年12月29日である。当時の専門は歴史画で、初めの作は神話や聖書を主題にした大きな絵だった。
1650年代の半ばに主題が変わる。日々の場面、風景、寓意へ移っていった。それでも、初期の歴史画で好んでいた静かで内へ向かう気分は、後の絵にも残っている、と館は書く。
この絵が館に入ったのは、ホレス・ハヴマイヤーの息子二人からの寄贈による。父の名を記念したものである。
来歴は、おそらく同じデルフトのピーテル・クラースゾーン・ファン・ライフェンから始まる。その後ヤコブス・ディシウスに伝わり、1696年5月16日の競売に35番として出た。そこから2世紀のあいだ、この絵はオランダとベルギーの競売を渡り歩いている。
寸法
45 × 39.9 cm
材質・技法
カンヴァスに油彩ゆさい
所蔵
ナショナル・ギャラリー(ワシントンD.C.)
目録
1962.10.1
ほか
背後の絵の額に IVMEER の署名
出典:ワシントン・ナショナル・ギャラリー 作品ページ2026-08-29 確認)