揺りかごを揺らす女
La Berceuse / メトロポリタン美術館
同じ絵が5点ある。どれを取るかを選んだのは、描かれた本人だった。ゴッホは「彼女は見る目があって、いちばん良いものを取った」と言い残している。手にした紐の先は、画面の外の揺りかごにつながっている。この連作に取りかかったのは、アルルで倒れる直前の1888年12月。仕上げたのは、病を挟んだ翌年の初めである。心を病んだ時期をまたいで、子守唄の絵を描き続けていた。
何が描かれているか
花模様の壁を背に、緑の服の女性が椅子に座っている。両手は膝の上に置かれ、1本の紐を握っている。
紐の先は画面の外にある。揺りかごにつながっているのだ。題の「ラ・ベルスーズ」はフランス語で、子守唄という意味と、揺りかごを揺らす人という意味の両方を持つ。
モデルはオーギュスティーヌ・ルーランという女性である。夫のジョゼフは郵便配達人だった。アルルでゴッホと親しくしていた一家である。ゴッホはこの絵を5点描いており、メトロポリタン美術館にあるこの1点は、彼女自身が自分のために選んだものだ。
なぜ重要か
5点のうちどれを取るか、彼女は自分で選んだ。ゴッホはその選択について「彼女は見る目があって、いちばん良いものを取った」と言い残している。描かれた本人が、画家の目から見ても最良の1点を見分けたことになる。
制作の時期が重い。ゴッホがこの連作を始めたのは1888年12月、アルルで倒れる直前だった。仕上げたのは翌1889年の初めである。心を病んだ時期をまたぎながら、彼は子守唄の絵を描き続けていた。5点という数も、この主題への執着を示している。
制作背景
1888年12月に描き始め、翌1889年の初めに完成した。35歳のときである。
題の「ラ・ベルスーズ」はフランス語で、子守唄という意味と、揺りかごを揺らす人という意味の両方を持つ。女性が手にしている紐は、画面の外にある揺りかごにつながっており、題はそこから来ている。
メトロポリタン美術館にあるこの1点は、モデルのオーギュスティーヌ・ルーランが自ら選び取ったものである。同じ構図の絵が5点あるなかで、いちばん本人が納得した1枚ということになる。
出典:メトロポリタン美術館 作品ページ / ファン・ゴッホ美術館《黄色い家》作品ページ(郵便配達人ジョゼフ・ルーランの裏づけ)(2026-08-29 確認)