何が描かれているか
ウィーンの実業家フェルディナント・ブロッホ=バウアーの妻アデーレが、金色の椅子に座るような姿で正面を向く。
顔と組んだ手は具体的だが、衣、椅子、壁、床の境目は模様の連続へ溶けている。人物の輪郭がはっきりするのは顔、肩、手の周辺だけで、下半身は金色の場へほとんど吸収されている。
作品の見どころ
目、三角、四角、渦巻きなどの形を探そう。異なる模様が人物の身体を隠しながら、その存在を金の中心へ集める。
細い首と手は模様に囲まれて強く目立つ。豪華な材料の量より、肌の静かな色との対比が肖像らしさを支える。左右で模様の密度や向きが異なるため、正面向きの静かな姿にも、視線がゆっくり動く流れが生まれる。
制作背景
1903年頃から多数の素描を重ね、1907年に完成した。油彩に金と銀を組み合わせた、いわゆる黄金様式の代表作である。
ナチスによる略奪後の長い返還問題を経て、2006年に相続人へ戻された。同年ノイエ・ギャラリーが取得し、現在も所蔵する。返還の経緯は作品の所有史に関わる重要な事実であり、画面の様式とは分けながら押さえておきたい。