1890年5月
黄色い背景を背に、素焼きの壺へ挿された青紫のアイリスの束。縦長の画面。
アイリス(アムステルダム)
Irises / ファン・ゴッホ美術館
花はもともと紫だった。青く見えるのは、赤い色の材料が1世紀のあいだにせたからである。療養所りょうようじょを出る直前の1890年5月、ゴッホは大きな花の静物画せいぶつがを4点まとめて描いた。アイリスが2点、ばらが2点。1年の療養でまとまった静物画はこれだけで、色の組み合わせと画面の形を変えたひとつづきの組として構想されている。
何が描かれているか
素焼すやきのつぼに、アイリスのたばがぎっしりしてある。黄色い背景に、青紫の花。縦長の画面である。
この花はもともと紫だった。いま青く見えるのは、赤い色の材料が褪せてしまったからである。描かれた当時は、もっと赤みを帯びた紫だった。1世紀のあいだに、絵は少しずつ別の色になっていった。
ゴッホにとって、この絵はまず色の研究だった。強い対比を作ること——それが目的である。紫の花を黄色い背景の前に置くと、形そのものが際立ってくる。補色ほしょく、つまり互いを強く見せ合う色の組み合わせを、ここでも使っている。
なぜ重要か
1890年5月、ゴッホは療養所を出る直前に、大きな花の静物画を4点まとめて描いた。アイリスが2点、ばらが2点。1年の療養のあいだで、まとまった静物画はこれだけである。
4点は、色の組み合わせと画面の形を変えながら、ひとつづきのものとして構想された。この絵はそのうちの1点で、同じ束をもう1点描いたほうでは、紫とピンクを緑に対して置いている。療養所を出る直前の数日に、彼は色の実験をまとめてやっていたことになる。そしてこの2か月後、彼は世を去る。
制作背景
1890年5月、37歳。サン=レミの療養所で描かれた。
ゴッホはこの束を2枚の絵にしている。この1枚では紫と黄を対にした。もう1枚では、紫とピンクを緑に対して置いている。同じ花を前に、色の組み合わせだけを変えて2度描いたことになる。
4点の静物画は、いま4か所に分かれている。アイリスの縦長がこの絵で、横長のアイリスとばらの縦長はメトロポリタン美術館にある。横長のばらは、ワシントンのナショナル・ギャラリーが所蔵している。
寸法
92.7 × 73.9 cm
材質・技法
カンヴァスに油彩ゆさい
所蔵
ファン・ゴッホ美術館(アムステルダム)
目録
s0050V1962(F0678・JH1977)
出典:ファン・ゴッホ美術館 作品ページ / メトロポリタン美術館《アイリス》作品ページ(1890年5月の静物画4点の裏づけ)2026-08-29 確認)