衰弱したゴヤを、背後の医師アリエタが両腕で支えている。自画像でありながら一人で自分を示すのではなく、病む身体と、それを支える別の人の手を中心にした作品である。画面下の長い銘文にも注目したい。
何が描かれているか
白い寝巻きのゴヤは力なく座り、アリエタが背後から身体を抱える。医師の片手は器具を口元へ近づけ、もう片方の腕は画家の胸を支える。
暗い背景には複数の顔がぼんやり現れ、下部の明るい帯には銘文が書かれている。
作品の見どころ
顔の表情だけでなく、重なった腕と手が二人の関係を伝える。自画像を画家の誇りや性格の表示に限らず、自分が他者に支えられている状態の記録にした点が特徴である。
背景の人物を特定の象徴へ決めず、手前の具体的な看護と対比して見る。ゴヤの顔だけでなく、胸を支える腕と口元へ近づく手を順に見ると、弱った身体を保つ具体的な行為が分かる。奥の人物を解読するより、前景の二人の重なりを中心に置くと作品の要点がつかみやすい。
制作背景
カンヴァスに油彩、117×79センチで、ミネアポリス美術館が目録番号52.14として所蔵する。
画面下の銘文は、1819年末の危険な病気から命を救った友人アリエタへの感謝と、1820年に制作したことを明記している。病名は断定しない。