何が描かれているか
岩山の前で聖フランチェスコがひざまずき、空に現れた翼をもつキリスト像を見上げる。両者を結ぶ光線は、手、足、脇腹へ伸び、聖人がキリストと同じ傷である聖痕を受ける出来事を示す。
下部には生涯の三場面を並べた小画面が付く。大きな主場面と時間の異なる物語を一枚の祭壇画にまとめ、信仰の対象と伝記の読み物を両立させている。
作品の見どころ
金地を使いながら、岩の斜面と礼拝堂の建物が場所を示す。フランチェスコの視線と光線を追うと、左下から右上へ力が流れ、奇跡の原因と結果が一目でつながる。
聖人の驚きを大げさな記号にせず、上体を反らす姿勢と開いた両手で伝える。足元の修道士は本に集中しており、同じ場所でも奇跡を見る者と見ない者が分かれる。
制作背景
ルーヴル美術館は1300〜1325年の作品として収蔵し、画面下の署名「フィレンツェ人ジョットの作」を重要な手がかりとしている。ピサのサン・フランチェスコ聖堂のために作られた大きな祭壇画である。
フランチェスコの聖痕は13世紀に成立した新しい聖人伝の中心場面だった。ジョットは超自然的な出来事を、光線、視線、地形の方向をそろえることで、初めて見る人にも読める場面へ整理した。