何が描かれているか
十字架上のキリストを中心に、左では気を失う聖母を女性たちが支え、右では兵士たちが衣を分けようとする。上空の天使は嘆きながら血を受け止める。
十字架の縦線が画面を二分し、悲しむ信徒と職務を続ける兵士を対照させる。マグダラのマリアは十字架の根元にひざまずき、足へ抱きつく。
作品の見どころ
キリストの身体は背景から孤立し、左右の群衆より高く静かに置かれる。視線を下へ移すと、聖母、マグダラのマリア、兵士という異なる反応が十字架の周囲に配置されている。
天使の曲がった身体と地上の垂直な人物を比べると、天上の激しい嘆きと地上の重い沈黙が分かれる。多人数の場面を左右のまとまりに整理する構成も明快である。
制作背景
1303〜1305年頃に描かれたスクロヴェーニ礼拝堂の一場面で、《キリストへの哀悼》の直前に位置する。鑑賞者は物語の順序に沿って、死とその後の悲しみを続けて見る。
磔刑は中世美術で繰り返された主題だが、ジョットは聖なる記号だけでなく、身体を支える手、衣を争う動作、足元へすがる姿を加え、人々が同じ事件へどう反応するかを見せた。