何が描かれているか
白い頭巾の女性たちが画面左に集まり、右上ではヤコブと天使が組み合う。太い木の幹が、見る人々と幻の場面を斜めに隔てる。
題材は聖書のヤコブの格闘。女性たちが説教のあとに心へ思い描いた光景として表される。女性たちの頭巾が画面の縁に沿って連なり、その視線の先に小さな格闘の姿が置かれている。
作品の見どころ
地面をほぼ一面の赤にした大胆さを見よう。自然な遠近感より、赤、白、黒、緑の大きな形が画面を組み立てる。
人物の輪郭は濃い線で囲まれ、奥行きが浅く見える。目に見えない幻を、現実より強い色で示している。木の幹は風景の一部であると同時に、現実の集まりと心に浮かぶ幻を分ける大きな境界として働く。
制作背景
1888年、フランス北西部ブルターニュのポン=タヴェンで制作した。ゴーギャンが印象派の細かな筆触から離れ、単純化した形と色へ進んだ重要作である。
現在はスコットランド国立美術館所蔵。村の信仰をそのまま記録したのではなく、画家が聖書と土地のイメージを結びつけた。宗教的な内容だけでなく、自然な色や遠近法から離れる転換を示す点が、後の絵画を考える手掛かりになる。