何が描かれているか
甲冑を着た聖マルティヌスが白馬に乗り、緑の外套を切っている。左の乞食は裸に近く、渡された布を身体へ巻こうとする。
伝説では、兵士だったマルティヌスが寒さに苦しむ人へ外套の半分を与えた。背景には小さくトレドの町が置かれ、物語を身近な風景へ近づける。白馬の大きな胴が二人の間を占め、その上と下で衣服を持つ手が向かい合っている。
作品の見どころ
大きな白馬を中心に、上の聖人と下の乞食を見比べよう。身分も服装も違う二人を、同じ長い縦の線に並べている。
激しい動作は少なく、外套を切る手と受け取る手が場面を進める。奇跡よりも、分け与える瞬間の静けさが伝わる。馬の明るさから緑の外套、乞食の肌へ視線を移すと、分け与える行為が色でも結ばれる。
制作背景
1597年にトレドのサン・ホセ礼拝堂のため注文され、1599年頃までに完成した。礼拝堂の祭壇を構成した作品の一つである。
現在はワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵。同じ主題の工房作や複製もあるため、所蔵館と寸法を合わせて作品を区別する。複数の関連作があるため、画像を見る際はこの作品の所蔵館と制作時期を合わせて確かめたい。