何が描かれているか
岩の洞窟の前で聖母が大きく横たわり、飼い葉桶の幼子を見守る。上では天使が羊飼いへ誕生を告げ、下では二人の女性が幼子を沐浴させる。
左右の小区画には旧約聖書の預言者イザヤとエゼキエルが立ち、巻物を広げる。キリスト誕生を、それ以前の預言が実現した出来事として一画面に結びつける。
作品の見どころ
聖母の濃い衣が洞窟の斜線と重なり、横長画面の中心をつくる。幼子は小さいが、飼い葉桶の白い布、牛とロバの視線、聖母の向きによって位置が明確になる。
一つの瞬間だけを再現せず、告知、誕生、沐浴を同時に置く中世的な物語法を使う。それでも岩山と人物の重なりが場面を整理し、左上から右下へ時間を追える。
制作背景
1308〜1311年制作の《マエスタ》正面下部にあったプレデッラ、つまり祭壇画の裾の小画面の一つである。現在はワシントンのナショナル・ギャラリー・オブ・アートが所蔵する。
本来は単独作品ではなく、隣り合うキリスト幼年伝と預言者像の連続の中で見られた。切り離された現在も、左右の預言者が元の祭壇画の横方向のつながりを伝えている。