1653–1654年頃
20〜22歳
森の中で腰かけたディアナの足を、ひざまずいたニンフが洗っている。ほかに3人の女と犬。
ディアナとニンフたち
Diana en haar nimfen / マウリッツハイス
この絵の右上には、長いあいだ青い空があった。昼の場面に見えていたのである。1999年の修復で、その青がフェルメールの時代に無い顔料がんりょうで描かれていると分かった。下に元の暗い絵の具は残っていたが、傷んでいて、もう戻せなかった。修復家は青の上から濃い茶を塗る道を選ぶ。それで戻ってきたのが、いま見えている月あかりの夜である。
何が描かれているか
木立の暗がりに、五人の女がひとかたまりになっている。中央で腰を下ろし、うつむいているのがディアナ。狩りと夜の女神である。額の飾りは月をかたどり、足もとには猟犬がいる。
右下では、濃い紫の衣の娘がひざまずいて、女神の足を洗っている。地面には真鍮の平たい鉢と白い布。赤い胴着に青い裳の娘がすぐ隣に座り、その後ろに黒い衣の女が立つ。左端の一人は背を向け、橙色の布を肩に掛けている。
誰も目を合わせていない。左下の岩には薊が一本生えていて、犬はそれを見ている。署名は、その犬と薊のあいだの石の上にある。
なぜ重要か
フェルメールといえば、少ない人数の静かな室内である。ところが画家として歩き始めた頃には、聖書や神話を主題にした、これより大きな絵を何枚か描いていた。この絵はその一枚で、いま知られている中でも最も早い時期にあたる。
ただし後の絵と切れているわけではない。夢を見ているような、内へこもった空気は、館が言うとおり、のちの室内画とそのままつながっている。神話でありながら、劇的な場面には仕立てていない。女神は何をするでもなく座り、足を洗われているだけである。
制作背景
この絵の来歴がたどれるのは19世紀からである。1866年より前、デン・ハーグの画商ディルク・ディルクセンが175ギルダーで売っている。買ったのはネヴィル・デイヴィソン・ゴルトスミットだった。
1876年5月、パリでゴルトスミットの遺品が競売にかかる。この絵はニコラース・マースの作として出品され、1万フランで落ちた。買い手はヴィクトル・デ・ステュルス。オランダ国のための購入で、マウリッツハイスに入ったのもこの年である。
1999年の修復は、元に戻せるやり方でなされた。空に重ねた薄い絵の具は、後の世代が別の判断をするなら、そのまま剥がせる。
寸法
97.8 × 104.6 cm
材質・技法
カンヴァスに油彩ゆさい
所蔵
マウリッツハイス(デン・ハーグ)
目録
406
出典:マウリッツハイス 作品ページ2026-08-29 確認)