何が描かれているか
手前には疲れ、傷つき、動けなくなったギリシャ人の家族が集まる。右では馬上のオスマン兵が女性を連れ去ろうとし、遠景には戦いと煙が続く。
1822年にキオス島で起きた虐殺を題材にする。同時代の事件だが、現場を直接取材して写した記録画ではない。手前の人物は横一列ではなく、座る、倒れる、連れ去られる姿が左右へ分かれている。
作品の見どころ
一人の英雄を探すと中心が空いているように感じる。左右の人物群と広い荒野を一緒に見ることで、救いの見えない状況が伝わる。
明るい服や肌は美しく描かれる一方、表情と姿勢は重い。色の豊かさが楽しい場面だけに使われるとは限らないことが分かる。画面中央の空いた地面から遠景の煙へ目を運ぶと、個人の苦しみが島全体の荒廃へつながる。
制作背景
1824年のサロンに出品された。ギリシャ独立戦争への関心が高まる中、古代ギリシャの栄光ではなく、当時の市民の被害を大画面にした。
現在はルーヴル美術館所蔵。作品は後年に空などへ手が加えられており、1824年の展示時と完全に同じ状態ではない。同時代事件を扱っていても、取材写真のような証拠ではなく、画家が構成した歴史画として区別する。