何が描かれているか
空中演技者ミス・ララが、歯でくわえた器具につながるロープから身体を下げる。観客席から天井へ急角度で見上げる構図である。
ミス・ララは混血のプロのサーカス芸人で、強さと技術で知られた。小さな身体が巨大な建物を支えるように見える。人物は画面の中央より左へ寄り、伸びるロープと梁の方向が、さらに上の見えない支点を想像させる。
作品の見どころ
身体からロープ、天井の梁へ続く斜線を追うと、視線が上へ引き上げられる。画面のほとんどを占める建築が高さを強調する。
オレンジ色の衣装は薄い天井の中で強く目立つ。顔の表情より、宙で保たれる身体の緊張が中心だ。大きな天井と小さな身体の差によって、華やかな見世物だけでなく、落下を防ぐ技術と緊張が伝わる。
制作背景
1879年の第4回印象派展に出品。ドガは実際の公演を素描し、ポーズを研究したうえで大きな絵へ組み立てた。
現在はロンドン・ナショナル・ギャラリー所蔵。娯楽を見る観客の位置と、演技者の身体的な仕事を一緒に示す。印象派展への出品作でも、現場で得た素描をもとに大画面へ再構成した点を押さえて見たい。