何が描かれているか
カフェのテーブルに男女が並んで座る。女性の前には淡い緑色のアブサン、男性の前には別の飲み物が置かれ、二人は互いを見ない。
モデルは俳優エレン・アンドレと版画家マルスラン・デブータン。実在人物を使ったが、店で偶然撮った場面ではなく演出された。女性の肩は沈み、両手は膝近くへ下がる一方、男性は身体を外へ向け、同じ席でも別々の方向を作る。
作品の見どころ
手前の空いたテーブルが斜めに重なり、二人を遠くへ押しやる。近い席に座っていても、画面の空白が距離を感じさせる。
背後の鏡には店内の光と影が曖昧に映る。中心を外した構図が、都市の一瞬をのぞいたような印象を作る。手前を横切るテーブルの縁が鑑賞者との距離になり、近代都市の場面を近くからのぞく位置へ置く。
制作背景
1875〜1876年頃に制作。題名は後に《アブサン》として知られるようになったが、オルセー美術館の基本題は《カフェにて》である。
現在はオルセー美術館所蔵。モデル本人の性格や生活を証明する肖像ではなく、近代都市の孤立を構成した作品として見る。モデル名が分かっていても、描かれた孤立や疲労を二人の実生活の証拠として読み替えないことが重要である。