何が描かれているか
ナポレオンは軍服姿で書斎に立ち、右手を上着へ入れる。時計は午前4時13分、机には燃え尽きかけたろうそく、椅子には法典を示す書類がある。
一つひとつの小道具は、夜通し働いた軍人、皇帝、立法者という複数の役割を一人に集める。実際のある朝を写した場面ではない。机と椅子が人物を左右から挟み、立ったままの姿を夜通し続いた仕事の中心に置く。
作品の見どころ
乱れた髪、開いた袖口、しわのある靴下に注目しよう。公式の制服を着ながら、疲れを示す細部が勤勉さの証拠として使われる。
時計、ろうそく、書類を順に読むと時間の物語が生まれる。写実的に描かれていても、所蔵館が説明する通り、政治的な神話を作る肖像である。整った軍服と乱れた細部を行き来して見ると、権力者の威厳と勤勉な働き手という二つの像が重なる。
制作背景
1812年、スコットランドの貴族アレグザンダー・ハミルトンの注文で制作された。ナポレオン本人はおそらくポーズを取っていない。
現在はワシントン・ナショナル・ギャラリー所蔵。実在感の強さと、構成された宣伝的イメージが同時にある点が重要である。時計や法典は目に見える物だが、それらが示す性格は意図的に構成された表現として区別したい。