何が描かれているか
釣り針にかかった大きな鱒が暗い岸辺で横たわり、まだ口を開けている。
濡れた身体、草、水の暗がりが近い色で重なる。鱒の口には糸と針が残り、えらの赤と白い腹が暗い水辺から浮かぶ。身体は横たわっていても尾や口には緊張があり、食卓に整えられた魚ではなく、捕らえられた直後の状態を示す。
作品の見どころ
魚の鱗を整然と描かず、厚く粗い絵具で傷ついた身体の重さを伝える。
白い腹と赤いえらを暗い背景へ浮かべ、静物画を劇的な場面へ変える。鱗の反射は一枚ずつ均一に描かれず、銀、緑、褐色の厚い絵具がこすれ合う。魚の長い身体を画面いっぱいに置き、周囲を暗く狭めることで、静物画に抵抗するような力を与える。
制作背景
1873年作。1871年のパリ・コミューン後に6か月投獄された時期を経て、故郷で魚の静物画を複数描いた。
現在はオルセー美術館所蔵。同館は捕らえられた魚へ画家自身を重ねる解釈を示すが、唯一の意味と断定しない。投獄後の状況と結びつけ、魚を画家自身の比喩とする読みをオルセー美術館も紹介している。ただし、それは有力な解釈であり、魚の姿が一つの伝記的意味だけを表すと断定しない。