1485年頃
39〜40歳頃
ヴィーナスとマルス。目覚めたヴィーナスの向かいでマルスが眠り、四人の小さなサテュロスが武具で遊ぶ横長の絵。
ヴィーナスとマルス
Venus and Mars / ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
愛の女神ヴィーナスは目を覚ましているが、戦いの神マルスは武具を外して眠り込んでいる。小さなサテュロスたちが兜や槍で遊んでも、マルスは起きない。「愛が戦いに勝つ」という関係を、勝負の場面ではなく二人の対照で見せた絵である。
何が描かれているか
左のヴィーナスは衣をまとって横たわり、右のマルスを見ている。右のマルスは裸に近い姿で深く眠り、四人のサテュロスが彼の武具を運んだり、兜に入ったり、耳元で法螺貝を吹いたりしている。戦争の道具が子どもの遊び道具のように扱われている。
二人の視線は交わらない。ヴィーナスだけが状況を見渡し、武装を失ったマルスは無防備である。眠りと目覚め、裸と衣服、静けさと悪戯という対比を順に探すと、長い横画面の意味が整理しやすい。
なぜ重要か
ナショナル・ギャラリーは、愛が戦争を征服した姿として読む一方、性的な意味や豊かさを願う意味も紹介している。これらは作品の解釈であり、一つの答えが画面に明記されているわけではない。まず目覚めたヴィーナスと眠るマルスという観察から出発したい。
神話の神々を、遠い威厳のある存在だけでなく、眠りや悪戯のある場面に置いた点も見どころである。戦いの神が力を使えない状態だからこそ、ヴィーナスの落ち着きが強く見える。大きな動作を使わず、関係の逆転を伝えている。
画面を左から右へ読むと、起きているヴィーナスから遊ぶサテュロスを経て、眠るマルスへ着く。今度は右から左へ戻ると、武具を失った戦いの神と、それを見守る愛の女神の差が強くなる。横長の形そのものが、比較する見方を促している。
制作背景
横に長い形から、邸宅の壁に置かれるスパッリエーラだった可能性がある。スパッリエーラとは、家具や壁の高い位置を飾る横長の絵のこと。結婚に関係する注文だったとも考えられるが、注文主や最初の用途は確定していない。
技法は卵テンペラと油絵具を併用し、支持体はおそらくポプラ材である。大きさは縦69.2センチ、横173.4センチ。低く横へ広がる形式は、左右に離れて横たわる二人と、その間を動くサテュロスを一列につなぐのに適している。
最初の用途は確定していません
婚礼用の壁面装飾スパッリエーラだった可能性が高いとされますが、注文主と最初の設置場所は分かっていません。
寸法
69.2 × 173.4 cm
材質・技法
木板に卵テンペラと油彩ゆさい
所蔵
ナショナル・ギャラリー(ロンドン)
目録
NG915
形式
壁面装飾スパッリエーラの可能性
出典:ナショナル・ギャラリー(ロンドン)作品ページ2026-09-06 確認)
画像はWikimedia CommonsのPD-Art複製です。忠実複製の扱いには法域差があります。
画像:サンドロ・ボッティチェリヴィーナスとマルス》/Sandro Botticelli, Venus and Mars, National Gallery, London, via Wikimedia Commons.
画像の出典 / Public Domain Mark 1.0 / PD-Art(法域注意)(画像情報:2026-09-06 確認)
Wikimedia CommonsのPD-Art複製です。忠実複製の扱いには法域差があります。
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