剛毅
Fortezza (Fortitude) / ウフィツィ美術館(フィレンツェ)
武具を身につけた女性が、玉座に静かに座っている。題名の「剛毅」は、困難に耐え、正しい行いを続ける心の強さを表す。腕力を振るう場面ではなく、落ち着いた姿勢と引き締まった表情によって強さを見せた絵である。まず、武具の硬さと顔の静けさを見比べたい。
何が描かれているか
描かれているのは、キリスト教の七つの徳の一つである剛毅を人の姿にした女性像である。徳とは、人がよく生きるために大切だと考えられた心の性質を指す。実在の人物の肖像ではなく、目に見えない考えを人物として表した像である。
女性は金属の胸当てや腕の防具を身につけているが、戦闘中ではない。片手を長い杖のようなものに添え、重い衣をまとって座る。装飾の多い玉座の中でも、身体の向きと視線が一つの落ち着いた形を作っている。
なぜ重要か
この作品は、ボッティチェリが独立した画家として活動し始めた時期の重要な注文である。線の美しさだけで知られる後年の神話画より前に、硬い武具、厚い布、木製の玉座を描き分けていたことが分かる。若い時期の出発点として見ると、後の女性像との共通点と違いを比べられる。
強さを動きではなく静止で示した点にも注目できる。肩や腕に力を込めた英雄ではなく、耐える意志を持つ人物として表されている。題名を知らずに表情と姿勢だけを見たあとで「剛毅」という言葉に戻ると、画家が抽象的な性質をどう見える形にしたか考えやすい。
制作背景
この板絵は、フィレンツェの商業裁判所のために計画された「七つの徳」の連作に属する。連作全体は1469年にピエロ・デル・ポッライオーロへ注文されたが、《剛毅》だけはボッティチェリが担当した。大きな企画の一部分を別の若い画家が任された例である。
技法はテンペラ・グラッサで、顔料を卵に油などを加えた結合材で溶いて描く方法である。縦167センチ、横87センチの細長い板に、一人の人物をほぼ等身大で置く。画像で見るときも、人の身体に近い大きさを想像すると、玉座と人物が占める重みを感じやすい。
出典:ウフィツィ美術館 作品ページ(2026-09-06 確認)
画像はWikimedia CommonsのPD-Art複製です。円外の白地だけを透明化しています。忠実複製の扱いには法域差があります。
画像:サンドロ・ボッティチェリ《剛毅》/Sandro Botticelli, Fortitude, Uffizi. Scan from Alison Wright, The Pollaiolo Brothers, via Wikimedia Commons.
Wikimedia CommonsのPD-Art複製です。作品外側だけを透明化しています。忠実複製とイタリア文化財制度の扱いには法域差があります。
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