1489–1490年頃
44〜45歳頃
チェステッロの受胎告知。奥行きのある室内で天使ガブリエルがひざまずき、身を引く聖母マリアと手を差し伸べ合う。
チェステッロの受胎告知じゅたいこくち
Annunciazione di Cestello (Cestello Annunciation) / ウフィツィ美術館(フィレンツェ)
天使ガブリエルと聖母マリアが、広い床をはさんで向き合う。二人の手は触れないが、互いへ伸びる曲線が会話を見える形にしている。まず天使の腕からマリアの手までを追い、その後に窓の外へ視線を移したい。
何が描かれているか
天使ガブリエルが、マリアにキリストを身ごもることを告げる受胎告知の場面である。天使はひざまずき、マリアは読んでいた本から離れて身を引きながら、手を差し出す。驚き、ためらい、受け入れが、一つの姿勢の中に重ねられている。
室内の奥には開口部があり、遠い風景と囲まれた庭が見える。ウフィツィ美術館は、この閉ざされた庭をマリアの純潔を示す象徴と説明する。室内の幾何学的な線は奥へ進み、二人の感情的な動きとは異なる静かな空間を作っている。
なぜ重要か
この作品では、言葉を発する場面が手の動きに置き換えられている。天使の指、マリアの手、かしいた身体の間に空白があり、その距離が緊張を生む。二人の顔だけでなく、触れそうで触れない手を見ると、知らせを受け取る瞬間が伝わりやすい。
遠近法えんきんほうによる整った室内と、波のように曲がる衣や身体が対照を作る。遠近法とは、平らな画面に奥行きを感じさせる描き方のこと。床や壁の線は奥へまっすぐ進む一方、人物は互いへ曲がる。空間の規則と感情の動きが同じ画面に置かれている。
二人の間には広い床があるのに、伸ばした手の形によって心理的な距離は近く感じられる。背景へ向かう直線と、手前で向き合う曲線を別々に追うと、建物の奥行きと一瞬の緊張を同時に組み立てた画面だと分かる。
制作背景
1489年、ベネデット・ディ・セル・フランチェスコ・グアルディが、フィレンツェのチェステッロ修道院しゅうどういん内にある一族の礼拝堂のために注文した。縦150センチ、横156センチのテンペラによる板絵である。題名の「チェステッロ」は、最初に置かれた場所に由来する。
額縁には『ルカによる福音書』1章35節と38節のラテン語が記され、天使の告知とマリアの応答を示している。ウフィツィ美術館は、同時代のサヴォナローラの説教との関係も解釈として紹介するが、制作事情をそれだけで説明することは避ける。注文記録と、時代背景からの読みは別に扱う。
サヴォナローラとの関係は所蔵館の解釈です
簡素な空間と抑えた衣装を当時の宗教熱に結びつける説明がありますが、制作事情をサヴォナローラだけで説明しません。
寸法
150 × 156 cm
材質・技法
板にテンペラ
所蔵
ウフィツィ美術館(フィレンツェ)
目録
1890 n. 1608
注文
1489年、グアルディ家の礼拝堂用
出典:ウフィツィ美術館 作品ページ2026-09-06 確認)
画像はWikimedia CommonsのPD-Art複製です。忠実複製の扱いには法域差があります。
画像:サンドロ・ボッティチェリチェステッロの受胎告知》/Sandro Botticelli, Cestello Annunciation, Uffizi, via Wikimedia Commons.
画像の出典 / Public Domain Mark 1.0 / PD-Art(法域注意)(画像情報:2026-09-06 確認)
Wikimedia CommonsのPD-Art複製です。忠実複製とイタリア文化財制度の扱いには法域差があります。
間違いを見つけたら、教えてください →