ラ・ベル・フェロニエール
Portrait de femme, dit à tort La Belle Ferronnière / ルーヴル美術館
何が描かれているか
額に細い髪飾りを着けた女性が、手すり越しにこちらを見ている。手すりは絵の手前を横切っていて、見る人と彼女のあいだを物理的に隔てている。
姿勢がねじれている。ルーヴル美術館の説明では、上半身は左へ四分の三向いているのに、頭は逆を向く。何かが急に注意を引いたかのように。
視線は、こちらを見ているようで見ていない。美術館は、目がわずかに右上へずれていると指摘し、それが見る人の視線と「遊んでいる」と書く。
なぜ重要か
当時のミラノの肖像は、真横から描くのが主流だった。この絵はそれをやめ、四分の三の向きを選んでいる。ルーヴル美術館は、これをフランドル絵画から学んだものだとする。
美術館が「並外れた新しさ」と呼ぶのは、そこではない。姿だけでなく、内面の生をも写し取った点である。だからこの肖像は近代的なのだ、と書いている。ただし美術館は、彼女の表情が白貂を抱く貴婦人よりも閉じている、とも付け加えている。
制作背景
モデルが誰なのかは決まっていない。いちばん支えのある説はルクレツィア・クリヴェッリで、根拠はレオナルドの手稿に見つかった一篇のラテン語の詩だ。書いたのはアントニオ・テバルデオという詩人。「レオナルドが、愛人のためにルクレツィアという女性の肖像を描いた」と讃える内容だ。愛人とは、ミラノ公のことである。
その詩には続きがある。レオナルドは彼女の魂までは描かなかった、なぜならそれは公のものだから、と。ルーヴル美術館は、手前の手すりも、見る人と彼女のあいだに距離を置くために注文主が求めたものかもしれない、と書いている。詩と絵が、同じことを言っていることになる。
そして通称が間違っている。「ラ・ベル・フェロニエール」はもともとフランス王の愛人を指す呼び名で、19世紀の画家アングルとその版画家が取り違えて、この絵に付けてしまった。誤りだと気づかれた後も、呼び名だけが残った。正式な題は、いまも「誤ってラ・ベル・フェロニエールと呼ばれる女性の肖像」である。
所蔵
ルーヴル美術館(パリ)⚠️ 現在展示されていない
ほか
正式題は「誤ってラ・ベル・フェロニエールと呼ばれる女性の肖像」
出典:ルーヴル美術館 作品ページ(2026-08-29 確認)